「現金過不足って、資産なの? それとも費用だったかな? 現金が足りない時と多い時の仕訳はどうすればいいのかな?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。現金過不足は、その状況によって貸方にも借方にも使うので、混乱してしまいますよね。
今回の記事では、現金過不足の勘定科目の区分や生じる原因、通常時と決算時の仕訳方法について、わかりやすく解説します。是非参考にしてください。
現金過不足とは?勘定科目の区分・原因・影響をわかりやすく解説
費用・資産等に該当しない「未決算勘定」
現金過不足とは、実際の現金残高が帳簿上の現金残高と一致しない場合に、実際の現金残高に合わせるために一時的に用いる勘定科目です。原因がわからない時に一時的に用いるので、資産・負債・純資産・収益・費用のどのグループにもあてはまらない未決済勘定となります。
会計期間中は使用できますが、原因が不明のままでも決算時には「雑損失」や「雑収入」に振替えて、現金過不足の相殺処理を行わなければなりません。
現金過不足が生じる、よくある原因とは
現金過不足が生じる、よくある原因として次のようなケースがあります。
お金の数え間違い
飲食店や小売店等、お金のやり取りをする機会が多いほど、お札や小銭の数え間違いが多発してしまいます。お釣りの金額を間違えて渡したり、細かい小銭をレジ周りで落として気付かなかったりすることもあります。また、レジ現金の過不足においては、不正も疑われるため、不正防止対策が必要です。
請求書業務
請求書に関わる業務でも、請求書の記載内容の不備や、消込業務の抜け等から、現金過不足が生じるケースが多くあります。
記帳ミス
記帳漏れや二重計上、金額の入力ミス、使用する科目の間違い等も現金過不足の原因として考えられます。また、受取小切手は、科目を「現金」で計上するため、実際に現金化するまでは、残高が一致しないので注意が必要です。
現金過不足が多い影響|会社の信頼度を失う恐れも
現金を扱う以上、現金過不足が生じてしまうことは避けられないでしょう。しかし、その回数が多かったり、金額が大き過ぎたりする場合は、会社の信頼度を失う恐れがあります。現金過不足が多いと、原因の究明作業や適切な対策がきちんと行われていないと見なされ、税務署や金融機関から「管理がおろそかな会社」と判断されることもあるでしょう。
また、飲食業等の現金過不足が発生しやすい事業ではない場合や、現金過不足が多額になる場合は、税務調査において問題視される可能性があります。
現金過不足を理解する上で押さえたい2つの勘定科目
どの勘定科目にも当てはまらない費用「雑損(雑損失)」
雑損(雑損失)とは、ほかのいずれの勘定科目にも当てはまらない費用を指し、営業外費用に属します。その費用が発生することがあまりなく、取引金額が少額で重要でないものが、雑損の対象です。
雑損には、主に以下のものがあります。
- 現金過不足(実際の現金が不足の場合)
- 損害賠償金(慰謝料、示談金、交通事故の見舞金等)
- 盗難による損失
- 生命保険の解約金(中途解約による損失)
- 解体費用
- 税金の延滞税・加算税・罰金
雑損として計上するかどうかは、営業外費用における総額の10%を超えるかどうかによって判断されます。ひとつの項目で営業外費用の10%を超える金額になる場合は、雑損という科目は使用せずに、独立した科目を用いて計上しなければなりません。
どの勘定科目にも当てはまらない収益「雑益(雑収入)」
雑益(雑収入)とは、ほかのいずれの勘定科目にも当てはまらない収益を指し、営業外収益に属します。その収入が発生することがあまりなく、取引金額が少額で重要でないものが、雑益の対象です。
雑益には、主に以下のものがあります。
- 現金過不足(実際の現金が過剰の場合)
- 還付金(法人税・消費税・都道府県民税の還付金等)
- 還付加算金
- 保険金
- 損害賠償金
- 報償金
- 家賃収入(通常の営業活動以外)
- 祝儀
- 作業屑等の売却収入
雑益として計上するかどうかは、前述した雑損と同様に、営業外収益における総額の10%を超えるかどうかによって判断されます。ひとつの項目で営業外収益の10%を超える金額になる場合は、雑益という科目は使用せずに、独立した科目を用いて計上しなければなりません。
【現金過不足で行う仕訳がわからない方へ】パターン別に解説
パターン①理由がわからない現金過不足が生じた
まずは、現金過不足が生じていることが判明したが、その理由がわかっていない場合に行う仕訳について見ていきましょう。
金額が少額の場合は、理由を突き止められなかったとしても、最終的に雑損や雑益で処理できるので、過剰に気にする必要はないと言えます。
現金の「不足」が生じた
(例)手元にある現金を確認したところ、帳簿上より4,000円少ないことがわかった。なお、原因は不明である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 4,000円 | 現金 | 4,000円 |
現金の不足が生じた場合は、借方に現金過不足を用います。実際の現金残高に合わせるために、帳簿上の現金(資産)を減らす必要があるからです。
現金の「超過」が生じた
(例)手元にある現金を確認したところ、帳簿上より8,000円多いことがわかった。なお、原因は不明である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 8,000円 | 現金過不足 | 8,000円 |
現金の超過が生じた場合は、貸方に現金過不足を用います。実際の現金残高に合わせるために、帳簿上の現金(資産)を増やす必要があるからです。
パターン②現金過不足が生じた理由がわかった
次に、現金過不足が生じた理由がわかった際に行う仕訳について見ていきましょう。
原因究明ができず現金過不足が大きくなってしまうと、前述したように会社の信頼度を失うことに繋がるので注意が必要です。理由が判明した際は、再発防止に取り組むと良いでしょう。
現金「不足」理由がわかった
(例1)現金「不足」として処理していた4,000円は、レジの底から見つかった4,000円であることがわかった。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 4,000円 | 現金過不足 | 4,000円 |
(例2)現金「不足」として処理していた3,000円は、現金で購入した消耗品の計上忘れであることが判明した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 3,000円 | 現金過不足 | 3,000円 |
理由がわかった時点で、正しい勘定科目に振替えて現金過不足を相殺します。
現金「超過」理由がわかった
(例1)現金「超過」として処理していた8,000円は、水道光熱費の二重計上が原因であることが判明した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 8,000円 | 水道光熱費 | 8,000円 |
(例2)現金「超過」として処理していた5,000円は、金種表を改めて確認したところ、現金の数え間違いが原因であることが判明した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
理由がわかった時点で、正しい勘定科目に振替えて現金過不足を相殺します。
パターン③決算まで現金過不足の理由がわからなかった
最後に、決算までに現金過不足の理由がわからなかった場合に行う仕訳について見ていきましょう。
現金過不足は、一時的に用いる勘定科目のため、そのまま決算(確定申告)することはできません。必ず別の勘定科目に振替えましょう。
現金の「不足」理由が不明のまま
(例)決算を迎えたが、現金「不足」として処理していた4,000円の原因が不明のままであるため、雑損に振替えた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損(雑損失) | 4,000円 | 現金過不足 | 4,000円 |
現金過不足のうち、不足の場合は決算時に雑損に振替えます。
現金の「超過」理由が不明のまま
(例)決算を迎えたが、現金「超過」として処理していた8,000円の原因が不明のままであるため、雑益に振替えた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金過不足 | 8,000円 | 雑益(雑収入) | 8,000円 |
現金過不足のうち、超過の場合は決算時に雑益に振替えます。
【応用問題】現金過不足が決算日に発覚した場合の仕訳方法
ここでは、会計期間中ではなく、決算日に現金過不足が発覚した場合の仕訳方法について解説します。
(例1)決算日における現金残高が4,000円、帳簿残高が6,000円で残高が一致していないことがわかった。なお、原因は不明である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑損(雑損失) | 2,000円 | 現金 | 2,000円 |
(例2)決算日における現金残高が6,000円、帳簿残高が4,000円で残高が一致していないことがわかった。なお、原因は不明である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 2,000円 | 雑益(雑収入) | 2,000円 |
上記のように、決算日に残高の不一致が判明した場合は「雑損」「雑益」で処理します。「現金過不足」勘定は用いないので、注意しましょう。
現金過不足における消費税の扱い
現金過不足における消費税の扱いは、不課税取引となるので、課税対象外です。
消費税の課税対象となる要件のひとつに「対価を得て行うものであること」があります。現金過不足は、原因が不明の際に用いる科目のため、対価性がないと考えられます。そのため、消費税の課税対象外となるのです。
現金過不足を防ぐには請求書の管理がとても重要
現金過不足を防ぐには、請求書の管理がとても重要と言えます。なぜなら、請求書に関わる業務で過不足が発生する場合が多いからです。
よくあるケースが、受け取った請求書の記載内容に不備があった場合に、正しい請求金額と支払う金額にズレが生じてしまい、過不足が発生するケースです。また、消込業務においても、消込の抜け(ミス)による計上漏れから過不足になることがあります。
そのため、現金過不足を防ぐために請求書の管理が重要になるのです。
中でも、請求書の金額が正しいかどうかを管理する上では、費用の確定を日次で行うことが最も効果的と言えます。そのためには、毎日納品書の金額を正しく入力して管理することが大切です。
会計システムを「oneplat」と連携すれば納品書・請求書の受け取りからデータの入力まで自動化が可能
受け取る納品書や請求書の量が多いほど、人為的ミスを避けられず、請求書の管理が難しくなるので、ITツールを導入して効率化を図ると良いでしょう。
「oneplat」は、納品書・請求書の受け取りからデータ入力まで自動化が可能なクラウドサービスです。販売者(取引先)が納品データをoneplat上で入力し、受け取った納品データを確認・承認することで請求書が発行されます。その過程で、納品データは販売管理システムと連携して自動入力でき、請求データは会計システムと連携して仕訳を自動入力できるので、手入力作業が一切不要です。
承認済みの納品データを変換して請求データを発行するので、正しい請求金額の管理が可能になり、請求書の不備がなくなります。そして、仕訳の消込も自動入力されるので、現金過不足の発生を防ぐことに繋がるのです。
【まとめ】現金過不足の概要・勘定科目の区分・仕訳の問題について押さえよう
今回の記事では、現金過不足の概要や原因、仕訳方法について解説しました。
会計期間中に行う仕訳や、決算時に行わなければならない仕訳について紹介しましたので、参考にしていただければと思います。
また、現金過不足の回数が多かったり、多額になったりする場合は、会社の信頼を失う恐れがあります。そのため、日頃から現金過不足が発生しないように管理を徹底することや、再発防止に取り組むことが大切です。管理をする上で、ITツールを利用することも検討しましょう。